まめちの本棚

Twitterで書ききれない話題をこちらに纏めています。

私の結婚感と、「婚活パーティーは行かないほうがいい」というお話。

入籍に向けての段取りと新居の確保が一段落し、身の回りが落ち着いてきたので、ぼちぼち婚活経験を振り返ってみたいと思います。

※最初にお断りしますが、本稿は私の独断と偏見に満ちています。「お前の恋愛観はおかしい」「結婚とはそういうものじゃない」「もっといい出会いの方法がある」などの違和感を持たれる方も少なくないと思いますが、それは私の筆力と人生経験の不足によるものです。若輩者の戯言としてどうかご容赦いただきたいと思います。

結婚と恋愛は別物

まず大前提として、「結婚と恋愛は別物」「別物である以上、成功に至るアプローチも異なる」ということを確認しておきたいと思います。

結婚は、特定の異性と数十年の間(基本的に夫婦どちらかが他界するまで)、本人たちだけではなくその親族を、そしてまだ見ぬ子孫をも「家族」とし、経済的・法律的に強い結びつきを形成する行為です。

恋愛は自分たちの間だけの問題で済みますが、結婚となるとお互いの親族を含めた家ぐるみの付き合いに発展します。昨日まで他人であった相手の母親や父親が「義理の」とはいえ自分の父母になるわけです。当然、将来的には介護や相続といった厄介事に巻き込まれることになります。

かかるお金も恋愛と結婚とではケタが違います。恋愛関係だけなら(普通は)デートやプレゼントやせいぜい海外旅行程度でしょうが、結婚となると話が違ってきます。結婚式を挙げると数百万円必要になります。(私のように)新居を買ったりすると数千万円単位のお金が動きます。

法律的にも様々な違いがあります。いったん結婚(婚姻)をすると、夫婦には様々な権利や義務が生じます。貞操を守る義務、相続を受ける権利などが代表例ですね。また、慣習をみても、「既婚者」となると周りから(実態はさておき)成熟した人間として一目置かれるようになり、社会的地位の向上に繋がることが多いです。

このように、結婚と恋愛とでは、その関係に紐づく権利や義務が大きく異なります。ゆえに、その意思決定はそう簡単にできるものではなく、相応の慎重さが求められます。

また、結婚相手と恋愛相手とでは、求める条件も自ずと変わってきます。条件は人によって様々でしょうが、「一緒にいても疲れない」「ワクワク・ドキドキではなく安定・安心感を求める」など、非日常的な「ハレ」ではなく平凡な「ケ」を一緒に過ごすのに相応しい性質を備えていることを求めるのが一般的ではないでしょうか。

恋愛の終結点として結婚に至るのはもちろん幸せなことであり、それを否定するつもりは毛頭ありません。ただ、結婚が目的であるにもかかわらず、男女交際を恋愛から始めようとすると、色々な間違いや遠回りが起こりやすくなると思います

婚活パーティーには行くな

「婚活しなきゃ!」と思った人は何をするか。まずは婚活パーティーに申し込む人が多いんですよね。ですが婚活パーティーは私はお勧めしません。理由は、効率が悪すぎるからです。

婚活パーティーは、そこで出会う異性が、自分が伴侶に求める条件を満たしているか否かは殆どわからないまま闇雲にマッチングさせられるという大きな欠点があります。トコロテン式に入れ替わり立ち代わり話をし、一人当たりの持ち時間は5分程度。このような限られた時間で会話をしたところで、相手の何がわかるというのでしょうか婚活パーティーは、気軽に参加できる、費用が安い、多くの人と短時間と出会える…というメリットがあることは否定しませんが、上記のデメリットはこれらのメリットを打ち消して余りあると思います。

これは余談ですが、ランダムにマッチングが大前提となるこの手の婚活パーティーが好まれる背景には、「自由恋愛の結果、成婚に至る」という価値観が支配的だからでしょう。効率性よりも「自然な出会い」を求める客のニーズに寄り添ったものだと思います。

「仲人」が付く婚活サービスを利用しよう

私がお勧めするのは、間に「仲人(=仲介人)」が入るタイプの婚活サービスです。世話好きそうなおばちゃんが、結婚願望のある男性と女性を見つけてきてマッチングさせる、という伝統的な結婚相談所のスタイルですね(私がお世話になったのもこのタイプでした)。

間に仲介人が入ることのメリットは、シンプルに言うと効率の良さです。双方の希望や条件、お互いの相性などをある程度絞り込んだ上でマッチングが成立する可能性の高い男女を紹介してくれるためです(この辺は、不動産屋さんとビジネススタイルは似ていますね)。

もちろん、手間暇がかかる分パーティー参加型の業者よりは会費などは高額になりがちですが、それに見合う価値はあると思います。

関連記事

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参考になりそうな文献

「婚活」時代 (ディスカヴァー携書)

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婚姻の話 (岩波文庫)

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【書評】『スタートアップ・バブル 愚かな投資家と幼稚な起業家』ダン・ライオンズ

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スタートアップ・バブル 愚かな投資家と幼稚な起業家

 少し前から、「上場ゴール」という言葉をTwitterで目にするようになった。会社を成長させるための事業資金を調達するための手段であるはずのIPOが、創業者や一部の株主の私腹を肥やすため「だけ」に使われているきらいがあることを揶揄した言葉である。

最近でも、某ベンチャー企業IPOを巡る醜聞がTwitterの投資クラスタ界隈で取り沙汰されていたのは記憶に新しいところである。創業者のなりふり構わない情報統制や、IPOの分け前を独り占めしようとする強欲さには眉をひそめざるをえない。

こういうビジネスを立ち上げる人や、中で働いている人ってどういう気持ちで日々を過ごしているんだろう?どんな社風や労働環境なんだろう?と興味を持つに至ったのが、本書を購入したきっかけである。

本書の概要

著者はもともと、アメリカの権威ある雑誌"Newsweek"で働いているベテランのジャーナリストだったが、ある日突然同社をクビになってしまう。幼い子供や病弱な妻を持つ彼は、新しい働き口を探すべく奮闘し、縁あって本書の舞台となる「ハブスポット」社にマーケティング担当者として職を得る。しかし、ハブスポットの社風や労働環境は、今まで著者が働いてきたいかなる職場とも異なるものであり、著者はそれに馴染めず悪戦苦闘することとなる。

著者が最初に違和感を覚えたのは、ハブスポットに蔓延する「意識の高さ」である。椅子の代わりに支給されるバランスボール。誰が演奏するのか分からないが置かれている様々な楽器。ラウンジにはカウチと黒板の壁があって、「ハブスポット=サイコー!」とか、「オレたちにはわけあって、耳が2つ、口が1つある。そう、話した分の2倍、聞くためさ」なんて感動的なメッセージが書き込まれているという*1。この「つかみ」で思わずクスッとなってしまう。

単に「意識が高い」だけならば特に害はないが、次第に著者はハブスポットの抱える問題や病理に気づいていくこととなる。その問題点を3つ紹介したい。

①蔓延する「やりがい搾取」

ハブスポットでは、社員の扱いが非常に粗雑だという。給料が安い割には精神的にキツい仕事を振り、身も心も消耗させる。挙句、従業員には十分な職能を与えないまま、用済みになったら放り出す。そのくせ、自社の社風や提供するサービスを「先進的で」「イノベーティブな」ものだと吹聴する。安いコストで猛烈に働いてくれる、すぐに変わりの利く世間知らずの若者をかき集めるためだ。

ハブスポットは赤字経営だが、多くの人手が必要だ。何百人もの人を、なるべく安い賃金で営業やマーケティングといった部署で働かせるには、どうすればいい? 大学出たての若者を雇い、仕事を面白く見せるのも一案だ。タダのビールやサッカーゲームテーブルを与え、職場には、幼稚園とフラットハウスを足して2で割ったような飾りつけをし、たびたびパーティを開く。そうすれば、やってくる若者が途切れることはない。年間3万5000ドルで、朝から晩までけた外れな精神的プレッシャーに耐え、クモザル部屋であくせく働き続けてくれる。彼らをだだっ広い部屋に、肩が触れ合うくらい密な状態で詰め込めば、さらにコストを削減できる。そして、こう告げるのだ。「オフィス空間にかかるお金がもったいないからじゃないよ。君たちの世代はこういう働き方が好きだから、こうしてるだけ」Kindle版、位置No.2377)

安い給料と悪い待遇をごまかすために、仕事にはビジネスという枠を超えた、何か崇高な目的があるかのように偽装する。そのような姿勢を、著者はこう批判する。

うちの会社がしているのは単なる金もうけじゃない、ぼくらの仕事には意義や目的がある、うちの会社にはミッションがある、ぼくもそのミッションの一翼を担いたい──そう信じることが、こうした企業で働く大前提になっている。これが、カルトと呼ばれる集団に加わるのとどう違うのかは、はっきりしない。忠実な社員と洗脳されたカルト信者の何が違うのだろう? どこまでが前者で、どこからが後者なのだろう? 境界線はあいまいだ。故意か偶然か、IT企業は、カルト教団とよく似た手法を採っているらしい。(Kindle版、位置No.1120)

②うわべだけの「多様性」

「多様性こそが大事!」と言いながらも、従業員や経営者の殆どが白人男性。35歳を過ぎると「おっさん」扱いされ、居づらい雰囲気にされて追い出される企業カルチャーであるという。

ハブスポットは、ある種の人たちばかり採用しているように見える。若くて影響されやすく、大学時代はフラタニティソロリティ(訳注:大学の女子社交クラブ)もしくは運動部に所属していたような人。ここが初めての職場だという人が多く、私の知る限り、黒人はいない。研修のクラスだけでなく、会社全体を見渡しても。しかも、ある種の白人だらけだ。中流で、郊外に住み、大半がボストン地区の出身。ルックスも同じ、ファッションも同じ。この画一性には、目を見張るばかりだ。Kindle版、位置No.1036)

うわべでは「多様性」を称揚しつつも、実態はとても画一的な社会集団であるというのだ。個性が大事、と言いながら、似たような所に住み、似たような酒を飲み、似たような自撮り写真をインスタに挙げてリア充アピールする人たちを連想させられる。

③はじめから「上場ゴール」目当て

ハブスポットのような「ウェイウェイした」ITベンチャーが、利益も出さず、若者を使い捨てる目的はなんだろうか。究極的には、経営陣とベンチャーキャピタルが株式公開で莫大な利益を得ることが企業経営の目的であるからだ、という。そこには社員や顧客の利益など顧みられることはない。

著者の友人は、ベンチャー企業への投資を「映画作り」に例えている。

「映画づくり」──ベンチャー投資家のある友人は、スタートアップ企業をつくるプロセスを、こう呼んでいる。IT企業を映画にたとえるこの友人によると、ベンチャーキャピタルがプロデューサーで、CEOは主演男優だ。できれば、マーク・ザッカーバーグのようなスターを獲得したい。若くて、なるべくなら大学中退者で、アスペルガー気味の子がいい。それから、台本──「企業の物語」──を書こう。起源となる神話、発見の瞬間、英雄の旅……それは、さまざまな壁を乗り越え、ドラゴンを退治し、市場を破壊し、変革していく物語だ。映画づくりのように、会社づくりに何百万ドルも投資したら、次は宣伝に何百万ドルも投資して、顧客を獲得する。 「IPOに至る頃には、人々が初日の上映を待ちきれず、劇場の周りに長蛇の列をつくっている──そんな状態が望ましいんだ。それが上場初日の光景さ。映画の封切り第1週目の週末と同じだからね。うまくやれば、観客がお金をもたらしてくれるから、きちんと投資を回収できる」。(Kindle版、位置No.3266)

ビジネスを拡大させるために必要な資金を市場から調達する、という株式公開の意義はそこにはない。株式公開が単なるショー・ビジネスと化しているのだ。

「おっさん」の知恵は案外正しいかも

以上、本書を読んで印象に残った個所を3点紹介した。全てのスタートアップ企業がハブスポットと同じだ、とは思わないし、実際のハブスポットが本書に書かれたようなひどい会社かどうかはわからない。とはいえ、これに近い会社が多いことも事実なのだろう。本書が例に出している数多くの事例を読むと、そう思わせるだけの説得力がある。

本書を読むと、世間で誉めそやされる「若い経営者が率いる、独創性あふれたベンチャー企業」が、実は脆く危険な存在なのではないか、と思わされる。同時に、歳を取った、コンサバティブな発想や価値観を持つ社員や経営者は、実は(新奇性はないけれども)経験豊かで重要な知恵を持つ貴重な存在(かもしれない)、ということにも気づかされる。

ハブスポットは、ポル=ポト政権下のカンボジアに似ているな、とふと思った。狂信的な共産主義者だったポル=ポトは、カンボジアを純粋な共産主義国家とすることを目論んだ。インテリや経験豊かな人材を片っ端から殺害し、何も知らない子供を社会の要職に据えるという凶行に走り、カンボジア社会や経済に壊滅的な打撃を与えた。極端な例であることは承知しているが、まるで経験のない若者を誉めそやし、巨大な権限を与えるとどうなるか、を示す一つの例と言えるだろう。

社会常識に欠ける若者を大量に採用し、十分な職能を付けさせないまま使い捨て、創業者と投資家だけが巨万の富を得るシステム--このような仕組みは反倫理的だし、真っ当なものとは到底言えない。

こういう会社に間違って入ってしまうことは(マトモな人にとっては)不幸としか言いようがないが、このような「落とし穴」は社会の至る所に口を開けている。案外、落とし穴を避けてくれるのは、「常識」「慣習」「違和感」といった、我々の社会に積み重ねられてきた、手垢の付いた古臭い考えなのかもしれない。

若手社員の皆さん、あなたの上司の説教、実は案外的を得てるかもしれませんよ。

類書紹介
それをお金で買いますか 市場主義の限界

それをお金で買いますか 市場主義の限界

 

最近、なんでもゼニカネ言い過ぎちゃいまっか?お天道様に背いてまでゼニ儲けするもんとちゃいまっせ、と「行き過ぎた資本主義」の在り方に疑問を投げかける本。本書については書評を書いている。

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金融に未来はあるか―――ウォール街、シティが認めたくなかった意外な真実
 

 昨今、金融ビジネスは無軌道に拡大しており、経済のあるべき姿から乖離していると警鐘を鳴らす本。本書『スタートアップ・バブル』を読むまでは「説教臭い内容だなぁ」と思ったが、本書に出てきた強欲な人々の在り方を見ると考えが少し変わった。

*1:Kindle版、位置No.187

大喜利『#ふぁぼされた数だけ本棚の本を紹介する』まとめ

纏めました。

 

サイモン・セバーグ モンテフィオーリ『スターリン―赤い皇帝と廷臣たち』 https://t.co/dMhlLIXLTp

曽我 誉旨生『時刻表世界史―時代を読み解く陸海空143路線』 https://t.co/POXKrCsHmj

トム デマルコ・ティモシー リスター 『ピープルウエア ヤル気こそプロジェクト成功の鍵』 https://t.co/4K6k9Ec4cy

『コレクション戦争×文学 全20巻』 https://t.co/zAWSbQhdpU

青木雄二ナニワ金融道https://t.co/axopHIdBYQ

大西巨人・のぞゑのぶひさ『神聖喜劇https://t.co/S0qQy54ZCg

夫馬信一『航空から見た戦後昭和史:ビートルズからマッカーサーまで』 https://t.co/1YgkiI53z7

山本七平『「空気」の研究』 https://t.co/LNghonGfy0

高橋孟『海軍めしたき物語』 https://t.co/KVHaYDpdDu

相田洋『NHKスペシャル マネー革命〈1〉巨大ヘッジファンドの攻防』 https://t.co/zAZA10gI6G

関根正雄訳『旧約聖書 ヨブ記https://t.co/tvzN1e7ECg

高野秀行『謎の独立国家ソマリランドhttps://t.co/nE8lq0HziU

Lonely Planet Iran (Travel Guide)" Burke, Andrew https://t.co/bAhVDXoZEB

三田村泰助『宦官 側近政治の構造』 https://t.co/PLCpVDKG2N

ナシーム・ニコラス・タレブブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質』 https://t.co/yWZ1xfe13r

デヴィッド ビーティ『機長の真実―墜落の責任はどこにあるのか』 https://t.co/pNi1nY9Pkt

新庄耕『狭小邸宅』 https://t.co/dmai6a3CKC

四方田犬彦『見ることの塩 パレスチナセルビア紀行』 https://t.co/EkxU1uMMcW

坂口尚『石の花』 https://t.co/squttVLnVk

速水健朗『ラーメンと愛国』 https://t.co/gH0wyDVa3p

藤井健司『金融リスク管理を変えた10大事件+X』 https://t.co/J3IApp6Oif

佐藤優『獄中記』 https://t.co/3kn6hvf0Wn

卯月妙子人間仮免中https://t.co/KxezQYeHm5

カレル・チャペック山椒魚戦争』 https://t.co/q4fbB7aAc1

みなもと太郎風雲児たちhttps://t.co/I3hTf9wdmz

猪瀬直樹ミカドの肖像https://t.co/ugwpCoT7WF

垣谷美雨ニュータウンは黄昏れて』 https://t.co/ESClS8vDJK

内田浩史『金融』 https://t.co/VFzZAFnDBa

柳田邦男『零戦燃ゆ』全6巻 https://t.co/3LmSGfNiN7

本間誠二『機械式時計 解体新書―歴史をひもとき機構を識る』 https://t.co/9ppKz7LpBZ

ベネディクト・アンダーソン『定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行』 https://t.co/6DpZktOWFV

ポール・クラーク『買うべき旅客機とは? (航空会社の機材計画のすべて)』 https://t.co/dTCTAnWWFJ

楠木新『左遷論 - 組織の論理、個人の心理』 https://t.co/UurOP0bgvC

山田雄一『稟議と根回し』 https://t.co/1IBfMWS3gc

木下康彦『詳説世界史研究』 https://t.co/jMDJkIFgmX

ピエール・バイヤール『読んでいない本について堂々と語る方法』 https://t.co/vKNhPhJZT6

白輪剛史『動物の値段』 https://t.co/3cPowSXjFh

三浦俊彦『戦争論理学 あの原爆投下を考える62問』 https://t.co/OvraTqaui7

マーク・ボウデン『ホメイニ師の賓客―イラン米大使館占拠事件と果てなき相克』上下巻 https://t.co/p8ff4ksHlH

中尾政之『失敗百選 41の原因から未来の失敗を予測する』 https://t.co/s0q8VAxSyL

松原始『カラスの教科書』 https://t.co/0A13Wlz77o

羽根田治『トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか』 https://t.co/VdXTwL8CrE

逢阪まさよし+DEEP案内編集部『「東京DEEP案内」が選ぶ 首都圏住みたくない街』 https://t.co/N7mt1pq9zJ

花輪和一刑務所の中https://t.co/zLaebM4GOE

【書評】『発掘狂騒史 「岩宿」から「神の手」まで

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発掘狂騒史: 「岩宿」から「神の手」まで (新潮文庫)

私の故郷である滋賀県の田舎には、近所に多くの寺社仏閣や遺跡がある。織田信長の夢の跡である安土城というメジャーなものを筆頭に、聖徳太子の腰掛け石という胡散臭いものもあったし、古墳時代に地元を支配していた豪族の墳墓なんてものもあった。私はそんなものを遊び場にして育ったこともあり、今でも古代の歴史には漠然とした憧憬を抱いている。

ある休日、神保町の本屋の書架を眺めていたところ目に留まったのが本書である。『発掘狂騒史』『岩宿』『神の手』というキーワードを目にして私はビビッときてしまった。私の古代のロマンと野次馬根性を同時に満たしてくれる稀有な一冊に思えたからである。きっと、名誉欲と自己顕示欲に駆られた男のスキャンダラスな話がてんこ盛りに違いない-そう考えた私は期待に胸を躍らせレジに向かったのだった。

そんな私の野次馬根性はいい意味で裏切られることとなった。本書では、ゴシップという言葉では片づけられない、奥の深い人間ドラマが繰り広げられているからである。

本書の特徴を2点挙げると、1点目は我が国の考古学史を概観できる良質な解説書であるという点である。もう1点は、戦後の考古学をリードしてきた人物の織り成す波乱万丈の人間ドラマという点である。

本書の書き出しは、2000年に起こった旧石器捏造事件の下手人である藤村新一に対するインタビューから始まる。インタビューを通じて、著者は、事件の本質を理解するには藤村の師であった芹沢長介のほか、芦沢の師匠であった杉原荘介について深く知ること、さらにはアマチュア考古学者でありながらも考古学に情熱を注ぎ、岩宿遺跡を発見した相澤忠洋の生涯を掘り下げる必要があるとの認識に至る。以降、著者は本書の大半を、相沢・芹沢・杉原といった藤村の先達たちの人生を振り返るという壮大なドラマとして描くことに費やすこととなる。

納豆の行商人を営む傍ら、アマチュア考古学者としてコツコツと発掘や研究を続けていた相澤は、のちに「岩宿遺跡」と呼ばれることとなる地において黒曜石で作られた打製石器を発見する。相澤はその石器を明治大学で考古学の研究を始めたばかりの芹沢に持ち込むものの、日本の考古学を覆す大発見となったこの発見は、芹沢の指導教官であった杉原の手柄とされてしまう。サラリーマン社会でもよくある話である。

芹沢はのちにこの師匠と反目し、後に東北大学に職を得て師匠と張り合い、確執を広げていく。一方で、この物語の一応の「主人公」である藤村は、芦沢に見いだされて力を発揮していく。しかし、芦沢に認められたいという一心から藤村は発掘捏造に手を染めてしまい、破滅の道を歩むこととなる。

上司が部下の成果を横取りするという構図や、「認められたい」という一心から不正に手を染めるという行動は、ビジネスの世界のみならず「良識の府」というイメージの強いアカデミズムの世界でも起こるものなのだなぁ、人間はなかなか救われない存在だなぁ、という読後感であった。

また、若き日に相澤を見出し、それまでの「定説」に異を唱え続けたことから強い批判を受けながらも、それを克服し日本考古学会に金字塔を打ち立てた芹沢が、老いてからは藤村の偽りの成果を妄信し、異説を頑なに受け付けず、晩節を汚す様には、老いの悲しさを垣間見た気がした。「人は自分の見たいと思うものしか見ない」とはカエサルの言葉であったか。学究の徒でない私も、襟を正して生きていかねばならないと思わされた。

 「考古学」という側面から人間の生きざまを炙り出す一級のドキュメンタリーである。考古学に関心のある方はもちろん、良質のドキュメンタリーを読みたいという方にはぜひお勧めしたい一冊だ。

発掘狂騒史: 「岩宿」から「神の手」まで (新潮文庫)

発掘狂騒史: 「岩宿」から「神の手」まで (新潮文庫)

【書評】『なぜ僕たちは金融街の人びとを嫌うのか?』

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 なぜ僕たちは金融街の人びとを嫌うのか?

自分の職業である金融業について語るとき、(私の経験上)相手はあまりいい顔をしない。理由はなぜだろう?バブル経済の崩壊以降、我が国の金融機関は相次いで破綻したり、不祥事を起こしたりして、国民の批判と不信の対象とされてきたからだろう。「多額の公的資金をつぎ込んでまで、なぜ金融業界を保護しなければいけないのか?」「金融業界は特別扱いされている」云々。

「金融のヤツらは自分が恥ずかしくないのか?」

だが、日本の金融機関はまだマシだろう。10年ほど前(2008年)に起きたリーマン・ショックによる被害を、邦銀は(さほど)受けていないためである。だが、海の向こうでは事情が異なる。震源地となったアメリカをはじめ、欧米では巨大な投資銀行が次々と破綻し、金融経済は大混乱に陥った。後始末のために巨額の公的資金-要は税金だ-が投入され、金融システムは辛うじて救われた。しかし、めでたしめでたしとはいかない。「金融のヤツら」のその後反省して大人しくなったのだろうか?そんなことはない。著者の友人はこう憤る。

「だって、ありえなくね?金融のヤツらを税金で救ってやったのに、だれもボーナス返さなくていいとか」

「しかも、その救済のおかげで生き延びた銀行のヤツらがものすごいボーナスもらってるとか、ないだろ」

「金融のヤツらは自分が恥ずかしくないのか?」(Kindle版、位置No.78)

少々お行儀は悪いものの、このコメントには注目すべきポイントが含まれている。それは、「民間企業にすぎない金融機関は特別扱いされている。そのうえ、役職員は法外な給与を得ており、ズルいことこの上ない」という反感である。そう、金融機関の職員は「ズルいやつ」と思われているのだ。この感情は、程度の差こそあれ、日本人も共感するのではないだろうか。不良債権処理に多額の公費を用いたメガバンクをはじめとした大手金融機関の職員が、高い給料を貰っているのは理不尽だ、と。

本書の取材方法

本書は、このような「世の中の声」を代表するような質問を金融の「中の人」にぶつけることで、金融業界とは何なのか?を解明しようとする野心的な試みを纏めた本である。金融についてまったくの門外漢だった著者は、ロンドンの金融街で働く200人を超す人にインタビューを行い、金融業界についてゼロから学んでいき、そのプロセスを公開したブログをイギリスの有力紙「ガーディアン」で連載した。著者は、ブログやメールにコメントを寄せた金融業界関係者にインタビューを行い、その人に次の取材相手を紹介してもらうといった手法で取材相手を増やし、金融業界に関わる様々な人にインタビューを行うことに成功している。また、ブログ上にも様々なコメントが投稿され、ブログ上でもやり取りを行うことで、体面でのインタビューに留まらない密度の濃い取材を実現している。

思っていたのと違った金融業の実態

インタビューを通じて、著者は金融業界に対する漠然とした認識を徐々に改めていく。それは、

  • 何億ドルという高額のボーナスを貰っているものはほんの一握りであること
  • 映画や小説に出てくる「強欲きわまりないカネの亡者」のような人はごく一握りであること
  • 一口に「金融業界」と言っても実に多様であり、その多くは実直に日々の仕事をこなしていること

…といったことである。

うんうん、そうなんだよ、やっと解る人が出てきたか!と私は嬉しくなった。そう、金融業のほとんどは地味な仕事であり、華やかに見える仕事はほんの一握りなのである。

金融の大事な役割

シティでプロジェクト・ファイナンスに従事するある女性はこう語る。

シティでは、私がやってるような融資の仕事は退屈だと思われてるの、と彼女は嫌そうに言った。「トレーダーはガラスのビルの中で、一日中電話に向かって怒鳴りながら、スクリーンを見つめて数字をいじくってるだけ。私の仕事は、学校を建てたり、有料道路を作ったり、橋を作ったり、海外に石油掘削施設や発電所を作ったりするのを助けること。ヨーロッパの全域にも、ロシア、アジア、サウジアラビアにも行くし、私自身がガスプラントの竣工式や太陽光発電の公園の開園式に立ち会ったり、石油精製工場を査察したりもする。どっちが退屈な仕事? 金融の世界は、みんなが想像してるようなディールメーカーやトレーダーよりはるかに大きいの。私の言いたいのは、そこなのよ。読者にだけじゃなく、家族や友達にもね。みんな私がすごいボーナスを追いかけて、金融危機を起こした張本人だと思ってるみたいだから(Kindle版、位置No.324)

金融の大事な役割の一つに「資金の余っているところから資金の足らないところにお金を「融通」し、社会全体の効用-言い換えれば幸福-を増大させることが挙げられる。私自身、ファースト・キャリアとして銀行を選んだ理由として、金融の持つこのような側面を魅力に感じたことが大きい。また、金融はこのような形で、世の中の役に立っていると確信している。それだけに、ごく一部の、「やんちゃ」な仕事に従事している人が金融業を代表しているかのような言説には苦々しさを感じていた。

金融を惑星になぞらえる

著者はまた、金融業界の複雑さや多様性を惑星になぞらえて表現している。

金融星を支配しているのは、保険、資産運用、銀行だが、その周りにはたくさんの島が散らばり、サービスを提供している。監査法人は企業の財務諸表を監査し、信用格付け機関は国や企業や金融商品の財務の健全性にレーティングをつける。格付けには、下は〝ジャンク〟と呼ばれる極めてリスクの高いものから、〝トリプルA〟として知られる超安全なものまである。そのほかにも、金融専門の弁護士事務所やコンサルティング会社、〝エグゼクティブ・サーチ〟と呼ばれるヘッドハンティング会社、金融系IT企業、M&Aのデータ管理サービス会社などがある。逆に星の外に飛び出して俯瞰すると、中央銀行や規制当局が、金融星の周りを衛星のように囲んで、すべてがルール通りに動いているかを遠くから確認している。Kindle版、位置No.480)

 ここで描写されるような複雑さもまた、金融業界を理解する上での難点の一つだろう(もっとも、金融業界と同程度に複雑な業界はほかにもあるとは思う)。正直、金融業界に従事している人で、(私を含め)金融業界の全体像を正確に理解している人がいったいどれくらいいるだろうか、という気がする。

金融業界の複雑さ

金融業界が複雑であると同時に、金融商品の仕組みもこれまた複雑である。オプション、先物証券化商品、仕組債-この業界では「頭の体操」みたいな金融商品が何種類も存在する。同じ金融機関に勤めていてもーー同じ部署で、隣の机で仕事をしている同僚ですらーー一体何をしているのかさっぱりわからない、という事態が往々にして起こる(今の私がそうだ)。隣の机の同僚がわからないものを、内部統制組織やコンプライアンス部署の門外漢が理解できるだろうか?というお話だ。このような知識の「タコツボ化」は、失敗や不正の範囲を広げる遠因となる。リーマンショックをはじめとした金融危機の多くは、このような内部統制の不完全さが遠因である、といっても決して過言ではないだろう。しかし、その「不完全さ」を解消するのは極めて困難である。

処方箋はあるのか

著者は、金融システムの根本的な作り直しが必要であると指摘する。逆インセンティブと利益相反が金融システムをいびつなものにしている2大悪だというのだ。解決するためには、以下に述べるような4つの法規制を導入すべきだという。

  1. 銀行を小さくし、「大きすぎて潰せない」という事態を避ける
  2. 利益相反を生み出す複数の事業を一つの傘の下に置かない
  3. 複雑すぎる金融商品の開発・販売・所有を禁じる
  4. リスクを取る人が、資本や評判のリスクを四六時中気に掛けるような報酬制度を適用する(納税者にツケ回しをしない)(Kindle版、位置No.3351)

しかしながら、著者は4つの提言の実現可能性には懐疑的である。①欧米では、金融業の経営者が政府の要職に就くことがよくあり、またその逆もしょっちゅうあるため、規制を骨抜きにしようとするロビイングが起こる ②金融業はグローバル化がきわめて高度に進んでいるため、各国が足並みをそろえて規制を導入することが極めて難しいーことがその理由である。

まとめ

総じて、本書の書きぶりは公平で中立的であるという印象を受けた。少なくとも、「金融業界のヤツらはけしからんからとっちめてやろう」という穿った見方で書かれた本ではない点に好感が持てる。

金融業の人は、自分の仕事の立ち位置を同業者の中から相対的に見なおすことができるだろう。また、非金融業の人は、金融の生態系が実に多様であること、また「中の人」が普段どのようにものを考えて暮らしているのか、を実態に近い形で伺い知ることができるだろう。金融業の人もそうでない人も、ぜひ手に取っていただきたい良著である。

なお、本書の表紙にでかでかと載っている「毎日、法に触れることを目にするよ」「別にいいんだ。自分のカネじゃないし、ってね」というコピーはいただけない。本書を良著たらしめている「客観性」「公平性」を損なう印象を与える文言である。出版社にはこのコピーが本書にふさわしいか、ぜひ再考をお願いしたい。

なぜ僕たちは金融街の人びとを嫌うのか?

なぜ僕たちは金融街の人びとを嫌うのか?

 
類書紹介
金融に未来はあるか―――ウォール街、シティが認めたくなかった意外な真実
 
リーマン・ショック・コンフィデンシャル(上) (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

リーマン・ショック・コンフィデンシャル(上) (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 
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