まめちの本棚

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【19/5/17完成】タミヤ 1/35スケール T34/76戦車(ソ連、WWⅡ)

戦車のプラモデルを組み立てた。

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◆キットについて

・「タミヤ 1/35  ソビエト陸軍 T34/76戦車 1943年型」というキット。タミヤの看板商品である「ミリタリーミニチュアシリーズ」の59番目の製品である。金型は1980年代に作られたものであり、息の長いロングセラー商品となっている。

T34は独ソ戦において重要な役割を果たした戦車である。詳しい内容はここでは立ち入らないが、歴史的な位置づけの重要性と、「戦車らしい」フォルムに惹かれ購入した。2,000円弱とリーズナブルなのも良い。

◆組立
・組立そのものは特段つまずくところもなくスムースに組めた。古いキットだがパーツの合いがよく、バリも少なく、さすがタミヤ製と感心。部品点数が少ないのもよい。昔は電池を入れてラジコン的に遊べたようで、その名残とみられる穴が車体下部に空いていたのでパテで埋めた。

・履帯はゴムでできており、プラ用接着剤ではくっつきにくいため、セメダインXを利用して接着した。転輪の上部にも接着を施すことで履帯が「垂れた」状態を再現できたと思う。

・スコップなどのアクセサリーは「自由に配置してよい」とのことだったので、黒く沈みがちな全体の色調にアクセントをつけるため木箱を選択した。

◆塗装
・車体:タミヤディープグリーンをエアブラシで吹き付けた。転輪や履帯などは全体を塗装した後に筆で塗り分けた。

ウェザリング:ミスターホビーのウェザリングカラー(ステインブラウン)にフラットブラックを加えたものでウォッシングした。スミ入れの延長という形で部分的にしかウォッシング用のエナメル塗料を塗らなかったため、塗りムラが出てしまった。全体を覆うように、ふんだんに塗料を使えばよかったと反省。

・ウォッシング中に、手すりなどの細かい部品が筆に当たって取れてしまうことがあったほか、細かい部品が邪魔になってうまく塗装できないことがあった。この点は今後改善したい。

・人形は「戦車の添え物」という位置づけとするため、組立後全体にサフを吹き、エナメルのブラックで墨入れを施しただけで仕上げた。決して人形の塗装が面倒だったからではない。

・人形を接着した後、全体に艶消しスプレーを吹いて完成。

◆総論
・戦車の模型を完成まで漕ぎつけたのはこれが初めて。エアブラシを使用したりウェザリングを本格的に施したりするのも初めてだったため、手間取ることもあったが、まずまずの水準に仕上がったのではないかと満足している。

 ◆キット

タミヤ 1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ No.59 ソビエト陸軍 T34/76戦車 1943年型 プラモデル 35059
 

 ◆参考書籍 

戦車模型の作り方 普及版 (ものぐさプラモデル作製指南)

戦車模型の作り方 普及版 (ものぐさプラモデル作製指南)

 

 

【感想】映画「大いなる旅路」(関川秀雄監督、1960年公開)

映画「 大いなる旅路」関川秀雄監督、1960年公開)がとてもいい映画だったので、感想を書き記しておくことにした。

あらすじは下記の通り。

大正末期の盛岡。国鉄の機関士助手を務める岩見浩造は、親友の佐久間太吉だけが試験に合格したため荒れていた。しかし先輩の橋本機関士が雪崩に遭遇し機関車もろとも死んでしまい、機関車の安全運転に努めることを決意する。漁師の娘ゆき子と結婚し三男一女をもうけるが、長男は戦死、長女は親の反対を押し切って男と出て行った。次男は東鉄教習所へ行くが、予科練へ行った三男は東京へ向かい行方知れずとなってしまう。

引用元:allcinema.net

本作では、軍歌を筆頭に、「歌」を作中の要所で効果的に利用している点が印象深かった。

物語中盤。浩造(三國連太郎)の4人の子供が学徒動員で鉄道工場における労働に従事するシーンや、出征していく兵士を送り出すシーンは「露営の歌」をBGMに進行していく。


露営の歌

浩造の運転する列車が雪崩で止められてしまい、乗客の兵士に歩いて先へ進むよう促すシーンでは、乗客全員が「出征兵士を送る歌」を歌うシーンが登場する。主人公一家を含め、日本全体が戦争に巻き込まれていく雰囲気を効果的に演出している。


<軍歌>出征兵士を送る歌

予科練に志願した三男・孝夫(中村嘉葎雄)が故郷を発つシーンでは、「若鷲の歌」をBGMとして利用している。緊張した面持ちの三男、複雑な表情で煙草を吸う父、そして本心とは裏腹に今にも泣きだしそうな表情で万歳をする母・ゆき子(風見章子)。三者三様の複雑な心中を察すると胸に迫るものがある。


若鷲の歌(予科練の歌)【戦時歌謡】

終戦間もない1947年の「二・一ゼネスト」のシーンでは、「歩兵の本領」の替え歌である「聞け万国の労働者」を歌いながら行進する若者のシーンが映し出され、時代が戦中から戦後へと大きく転換したことが印象付けられる。


「聞け万国の労働者(メーデー歌)」

三國連太郎をはじめ、風見章子、高倉健(次男)といった昭和の名優の演技を多いに楽しめる。他にも、国鉄時代のレトロな鉄道車両や、実際の線路と車両を用いたという迫力ある雪崩事故のシーンなど、みどころ満載の映画である。ぜひご覧になっていただきたい。

 

大いなる旅路

大いなる旅路

 

 

以下雑感:

・「歩兵の本領」は非常に有名な軍歌である。おそらく誰もが歌えたであろうこの歌の「替え歌」として、労働者の権利獲得闘争を歌い上げる「聞け万国の労働者」を作詞した人はかなりのセンスの持ち主だと思う。

・「若鷲の歌」は、「日本のいちばん長い日」(岡本喜八監督、1967年公開)においても、首都に迫りくる米軍機を迎撃すべく戦闘機が出立していくシーンでも非常に効果的に用いられていた。

・キャストに梅宮辰夫の名があったので楽しみにしていたのだが、結局どこに出演したのか分からずじまいだった。あとで確認したところ、主人公の幼馴染の長男という配役であった。後のヤクザ映画のイメージとは似ても似つかない、爽やかな青年を演じていた。

・作品の冒頭で、浩造が当初機関助手として乗務する汽車は「国鉄8620型」である。機関士として運転する機関車は「D51」。功績賞を受賞した浩造が上京するために乗車した列車を牽引したのは電気機関車の「EF58」。娘に会うために名古屋に向かう際に載る「こだま」号は151系と、蒸気機関車から電車特急へと、浩造が国鉄に奉職した30年間のうちに、鉄道技術が長足の進歩を遂げたことが印象付けられる。

・当時の国鉄職員は55歳で定年退職らしい。うらやましいなぁ。

 

トルコリラで大損こいた話

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こんにちは。まめちです。

トルコリラ、昨日(2018年8月10日)大幅に下げましたね。

数日のうちに強制ロスカットを食らい、大損した投資家も多いのではないかと思います。

じつは私も、かつてトルコリラに投資し、

「これまでの投資経験で最大額の損切り余儀なくされる」

という痛い目に遭ったことがあります。

今回は、なぜ

  1. トルコリラに投資し大損したのか 
  2. そこから得た教訓 

というテーマで話をします。

私の失敗を、もって他山の石としていただけると幸いです。

目次

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トルコリラ投資の全体像

なぜトルコリラに投資したか

高いスワップポイントに釣られた

ハイこれです。要は高利回りに釣られたんですね。

レバレッジ2~3倍で利回り10%超えるじゃん!スゲエ!」って思っちゃったわけです。

まぁでも冷静に考えてみると、通貨の価値が下落する確率が高いから高いスワップポイントを付けないと誰も買ってくれないわけですよね。

リスクのある先には高い金利を付ける。金貸しの大原則です。

でも当時は欲で目がくらんでしまって、その辺を冷静にジャッジできませんでした。

チャートの形をみて「この辺が底だ」と思った

トルコリラに投資する2~3ヶ月前からFXをやり始めました。

最初はスキャルピングデイトレードが主体だったのですが、損するばかりで全然利益を出せず、「根本的にトレードのやり方を変えないといけないなぁ」と考えていました。

そんな中、「スワップポイントを狙った中長期的なトレード」というスタイルの存在を知り、

「これならあくせく売ったり買ったりしなくても良い。サラリーマンとの兼業投資家である自分のスタイルに合っている」

と思いました。

そのような中、トルコリラは高利回り!というWeb広告を見て、ものは試しに…とトルコリラのチャートをみてみると、これまで継続的に続いてきた下落トレンドが一巡し、底打ちしたようにみえました。

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エントリー時に見ていたチャート

「このまま横ばいないしは反転上昇してくれれば、スワップポイント収入とキャピタルゲインで利益が出る。

仮に下落したとしても、高いスワップポイントでキャピタルロスをある程度補填できる。

これは『美味しい話』なのでは?

と思ってしまった訳です。

何度かトルコに訪れたことがあり、親近感があった

入社してから社会人3年目くらいにかけて、私はしょっちゅう中央アジアや中東を旅していました。

その際によく利用していたのが、関空を深夜に離陸し、翌日の早朝にイスタンブールに到着するトルコ航空の飛行機でした。

イスタンブールはあくまでトランジット先であり、トルコそのものを旅行先としたことはなかったのですが、

飛行機から見える街並みや、トルコ航空のサービスの良さ、イスタンブールの街の雰囲気はとてもスマートで近代的に見え、

とても高インフレに苦しむ経済的にシンドイ国とは思えませんでした。

こういう変な「土地勘」があることも手伝い、

「トルコ経済は今悪くても中長期的には回復する」という変な思い込みを形成してしまった訳ですね。

教訓

金管理の重要性

さてトルコリラ投資を始めてみると、確かに入ってくるスワップポイントは高いのですが、それ以上にレートは下がっていきました。

最初はレバレッジ3倍で始め、「追加投資をしても、レバレッジは投資時の購入レートと初期投資資金から換算して、5倍程度に留める」と決めていました。

しかし、

ナンピンを繰り返すうちにレバレッジはあっという間に5倍、6倍と膨らんでいき、最終的には10倍弱になっていました。

「最初に決めたレバレッジ上限を守る」という自分に課した資金管理ルールを破ってしまった。これが失敗の第1です。

損切りラインを事前に決定してからエントリーする

トルコリラ相場は、エントリーして以降下げ続け、底なし沼の様相を呈してきました。「どこかで損切をしないといけない」とは思ってはいたのですが、「いつか反転上昇するに違いない」と、神頼みをする毎日でした。「どこまで続くぬかるみぞ」といった気分です。(古い)

生兵法は大怪我の基

結局のところ、「自分は金融や経済、投資のことをある程度分かっている。その自分が投資するのだから、少なくとも大損することはない」 という慢心があったのだと思います。

金融のプロが投資で大負けする話は枚挙に暇がありません。その事実を知っていたにも関わらず、なぜか自分だけは大丈夫だと思ってしまうんですね。

加えて、何度かトルコを訪れたことで「多少なりとも現地事情をイメージできる」と考えてしまったこともナンセンスでした。

現地に何年か駐在して暮らしていたならまぁ話は分かりますが、イスタンブールを何回か訪れただけで何がわかるというのでしょう。

他人が自分に同じような話をしたら一笑に付すでしょうが、我が事となると客観的に判断できなかったのです。

「楽して儲かる話はない」

結局、このことに尽きるのだと思います。

結果的に見ると、致命傷を食らう前に強制ロスカットが執行されて良かったと思っています。さもなくば、ずるずると追加し投資を続け損失がさらに拡大したでしょうし、精神衛生上きわめて良くなかったと思います。

何より、これで一念発起してFXをきちんと学びなおそうと思い、トレードスタイルを根本的に改善する契機となったことが良かったですね。

ヒ〇セ通商さん、LCしてくれてありがとうございました(苦笑い) 

皆様もゆめゆめ、うまい話にはご注意ください。

 参考文献

漂流するトルコ―続「トルコのもう一つの顔」

漂流するトルコ―続「トルコのもう一つの顔」

 

 当局による少数民族弾圧や言論弾圧といった、あまり報道されることのないトルコのダークな一面を垣間見れる本です。著者は複数の少数言語に通じ、トルコに批判的な論文を書くあまりトルコ当局から入国禁止を食らったという「異例の経歴」を持つ方です。

インデックスファンドの「隠れコスト」論争をめぐるまとめ

久しぶりにブログを更新します。

4月14日(日)からその日の終わりごろにかけて、インデックスファンドの「隠れコスト」というテーマで、TLが大いに盛り上がりました。

「パッシブファンドのコスト」という非常にニッチなテーマをめぐり、運用業界の実務担当者(と思われる)方による数々の興味深い投稿がなされ、大変勉強になりました。(これこそTwitterの魅力ですね!)

このような貴重な知見を、Twitterのサーバーの中に死蔵してしまうのも勿体ないと思ったので、ブログで纏めることにしました。

※もし問題がありましたら適宜対応しますのでご連絡ください。

発端

発端は、「青井ノボル」氏によるこのブログ記事にかかるツイートです。

この記事の要点は下記の通りです。

  • インデックスファンドには信託報酬や売買委託手数料、税金などの他に、詳細が開示されていない「隠れコスト」がある
  • 「隠れコスト」には、バスケット取引にかかる手数料などが挙げられる。この取引にかかるコストは、本邦のルールでは開示しなくてよいことになっている。
  • 個人投資家には真のコストを正確に把握する術はない。フィデューシャリー・デューティーを日本に根付かせるためには、投信のコスト開示については更に厳格なルールで運用すべきかもしれない

この記事に対するShen氏のツイートがこちら。

このツイートを見て、私がインデックスファンドの運用を巡りツイートしたことで、話題が広がっていったようです。

以下に、インデックスファンドの抱える問題点を指摘したツイートを整理して紹介します。

事務負担が非常に大きい

取引コストを厳密に分離する方法がそもそもない

ファンドの繰上償還は実務上不可能

パッシブファンドの最大のリスクは流動性

フロントランニングにかかるコスト

ファンド運用の実務に接している(と思われる)方からの臨場感あふれるツイートを読むことができ、大変勉強になりました。

個人的にはこのツイートが一番ツボッたので最後にご紹介します。

関連書籍 

なぜ僕たちは金融街の人びとを嫌うのか?

なぜ僕たちは金融街の人びとを嫌うのか?

 

 

敗者のゲーム〈原著第6版〉

敗者のゲーム〈原著第6版〉

 

 参考記事

www.mamechiblog.com

 

【書評】『スタートアップ・バブル 愚かな投資家と幼稚な起業家』ダン・ライオンズ

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スタートアップ・バブル 愚かな投資家と幼稚な起業家

 少し前から、「上場ゴール」という言葉をTwitterで目にするようになった。会社を成長させるための事業資金を調達するための手段であるはずのIPOが、創業者や一部の株主の私腹を肥やすため「だけ」に使われているきらいがあることを揶揄した言葉である。

最近でも、某ベンチャー企業IPOを巡る醜聞がTwitterの投資クラスタ界隈で取り沙汰されていたのは記憶に新しいところである。創業者のなりふり構わない情報統制や、IPOの分け前を独り占めしようとする強欲さには眉をひそめざるをえない。

こういうビジネスを立ち上げる人や、中で働いている人ってどういう気持ちで日々を過ごしているんだろう?どんな社風や労働環境なんだろう?と興味を持つに至ったのが、本書を購入したきっかけである。

本書の概要

著者はもともと、アメリカの権威ある雑誌"Newsweek"で働いているベテランのジャーナリストだったが、ある日突然同社をクビになってしまう。幼い子供や病弱な妻を持つ彼は、新しい働き口を探すべく奮闘し、縁あって本書の舞台となる「ハブスポット」社にマーケティング担当者として職を得る。しかし、ハブスポットの社風や労働環境は、今まで著者が働いてきたいかなる職場とも異なるものであり、著者はそれに馴染めず悪戦苦闘することとなる。

著者が最初に違和感を覚えたのは、ハブスポットに蔓延する「意識の高さ」である。椅子の代わりに支給されるバランスボール。誰が演奏するのか分からないが置かれている様々な楽器。ラウンジにはカウチと黒板の壁があって、「ハブスポット=サイコー!」とか、「オレたちにはわけあって、耳が2つ、口が1つある。そう、話した分の2倍、聞くためさ」なんて感動的なメッセージが書き込まれているという*1。この「つかみ」で思わずクスッとなってしまう。

単に「意識が高い」だけならば特に害はないが、次第に著者はハブスポットの抱える問題や病理に気づいていくこととなる。その問題点を3つ紹介したい。

①蔓延する「やりがい搾取」

ハブスポットでは、社員の扱いが非常に粗雑だという。給料が安い割には精神的にキツい仕事を振り、身も心も消耗させる。挙句、従業員には十分な職能を与えないまま、用済みになったら放り出す。そのくせ、自社の社風や提供するサービスを「先進的で」「イノベーティブな」ものだと吹聴する。安いコストで猛烈に働いてくれる、すぐに変わりの利く世間知らずの若者をかき集めるためだ。

ハブスポットは赤字経営だが、多くの人手が必要だ。何百人もの人を、なるべく安い賃金で営業やマーケティングといった部署で働かせるには、どうすればいい? 大学出たての若者を雇い、仕事を面白く見せるのも一案だ。タダのビールやサッカーゲームテーブルを与え、職場には、幼稚園とフラットハウスを足して2で割ったような飾りつけをし、たびたびパーティを開く。そうすれば、やってくる若者が途切れることはない。年間3万5000ドルで、朝から晩までけた外れな精神的プレッシャーに耐え、クモザル部屋であくせく働き続けてくれる。彼らをだだっ広い部屋に、肩が触れ合うくらい密な状態で詰め込めば、さらにコストを削減できる。そして、こう告げるのだ。「オフィス空間にかかるお金がもったいないからじゃないよ。君たちの世代はこういう働き方が好きだから、こうしてるだけ」Kindle版、位置No.2377)

安い給料と悪い待遇をごまかすために、仕事にはビジネスという枠を超えた、何か崇高な目的があるかのように偽装する。そのような姿勢を、著者はこう批判する。

うちの会社がしているのは単なる金もうけじゃない、ぼくらの仕事には意義や目的がある、うちの会社にはミッションがある、ぼくもそのミッションの一翼を担いたい──そう信じることが、こうした企業で働く大前提になっている。これが、カルトと呼ばれる集団に加わるのとどう違うのかは、はっきりしない。忠実な社員と洗脳されたカルト信者の何が違うのだろう? どこまでが前者で、どこからが後者なのだろう? 境界線はあいまいだ。故意か偶然か、IT企業は、カルト教団とよく似た手法を採っているらしい。(Kindle版、位置No.1120)

②うわべだけの「多様性」

「多様性こそが大事!」と言いながらも、従業員や経営者の殆どが白人男性。35歳を過ぎると「おっさん」扱いされ、居づらい雰囲気にされて追い出される企業カルチャーであるという。

ハブスポットは、ある種の人たちばかり採用しているように見える。若くて影響されやすく、大学時代はフラタニティソロリティ(訳注:大学の女子社交クラブ)もしくは運動部に所属していたような人。ここが初めての職場だという人が多く、私の知る限り、黒人はいない。研修のクラスだけでなく、会社全体を見渡しても。しかも、ある種の白人だらけだ。中流で、郊外に住み、大半がボストン地区の出身。ルックスも同じ、ファッションも同じ。この画一性には、目を見張るばかりだ。Kindle版、位置No.1036)

うわべでは「多様性」を称揚しつつも、実態はとても画一的な社会集団であるというのだ。個性が大事、と言いながら、似たような所に住み、似たような酒を飲み、似たような自撮り写真をインスタに挙げてリア充アピールする人たちを連想させられる。

③はじめから「上場ゴール」目当て

ハブスポットのような「ウェイウェイした」ITベンチャーが、利益も出さず、若者を使い捨てる目的はなんだろうか。究極的には、経営陣とベンチャーキャピタルが株式公開で莫大な利益を得ることが企業経営の目的であるからだ、という。そこには社員や顧客の利益など顧みられることはない。

著者の友人は、ベンチャー企業への投資を「映画作り」に例えている。

「映画づくり」──ベンチャー投資家のある友人は、スタートアップ企業をつくるプロセスを、こう呼んでいる。IT企業を映画にたとえるこの友人によると、ベンチャーキャピタルがプロデューサーで、CEOは主演男優だ。できれば、マーク・ザッカーバーグのようなスターを獲得したい。若くて、なるべくなら大学中退者で、アスペルガー気味の子がいい。それから、台本──「企業の物語」──を書こう。起源となる神話、発見の瞬間、英雄の旅……それは、さまざまな壁を乗り越え、ドラゴンを退治し、市場を破壊し、変革していく物語だ。映画づくりのように、会社づくりに何百万ドルも投資したら、次は宣伝に何百万ドルも投資して、顧客を獲得する。 「IPOに至る頃には、人々が初日の上映を待ちきれず、劇場の周りに長蛇の列をつくっている──そんな状態が望ましいんだ。それが上場初日の光景さ。映画の封切り第1週目の週末と同じだからね。うまくやれば、観客がお金をもたらしてくれるから、きちんと投資を回収できる」。(Kindle版、位置No.3266)

ビジネスを拡大させるために必要な資金を市場から調達する、という株式公開の意義はそこにはない。株式公開が単なるショー・ビジネスと化しているのだ。

「おっさん」の知恵は案外正しいかも

以上、本書を読んで印象に残った個所を3点紹介した。全てのスタートアップ企業がハブスポットと同じだ、とは思わないし、実際のハブスポットが本書に書かれたようなひどい会社かどうかはわからない。とはいえ、これに近い会社が多いことも事実なのだろう。本書が例に出している数多くの事例を読むと、そう思わせるだけの説得力がある。

本書を読むと、世間で誉めそやされる「若い経営者が率いる、独創性あふれたベンチャー企業」が、実は脆く危険な存在なのではないか、と思わされる。同時に、歳を取った、コンサバティブな発想や価値観を持つ社員や経営者は、実は(新奇性はないけれども)経験豊かで重要な知恵を持つ貴重な存在(かもしれない)、ということにも気づかされる。

ハブスポットは、ポル=ポト政権下のカンボジアに似ているな、とふと思った。狂信的な共産主義者だったポル=ポトは、カンボジアを純粋な共産主義国家とすることを目論んだ。インテリや経験豊かな人材を片っ端から殺害し、何も知らない子供を社会の要職に据えるという凶行に走り、カンボジア社会や経済に壊滅的な打撃を与えた。極端な例であることは承知しているが、まるで経験のない若者を誉めそやし、巨大な権限を与えるとどうなるか、を示す一つの例と言えるだろう。

社会常識に欠ける若者を大量に採用し、十分な職能を付けさせないまま使い捨て、創業者と投資家だけが巨万の富を得るシステム--このような仕組みは反倫理的だし、真っ当なものとは到底言えない。

こういう会社に間違って入ってしまうことは(マトモな人にとっては)不幸としか言いようがないが、このような「落とし穴」は社会の至る所に口を開けている。案外、落とし穴を避けてくれるのは、「常識」「慣習」「違和感」といった、我々の社会に積み重ねられてきた、手垢の付いた古臭い考えなのかもしれない。

若手社員の皆さん、あなたの上司の説教、実は案外的を得てるかもしれませんよ。

類書紹介
それをお金で買いますか 市場主義の限界

それをお金で買いますか 市場主義の限界

 

最近、なんでもゼニカネ言い過ぎちゃいまっか?お天道様に背いてまでゼニ儲けするもんとちゃいまっせ、と「行き過ぎた資本主義」の在り方に疑問を投げかける本。本書については書評を書いている。

www.mamechiblog.com

金融に未来はあるか―――ウォール街、シティが認めたくなかった意外な真実
 

 昨今、金融ビジネスは無軌道に拡大しており、経済のあるべき姿から乖離していると警鐘を鳴らす本。本書『スタートアップ・バブル』を読むまでは「説教臭い内容だなぁ」と思ったが、本書に出てきた強欲な人々の在り方を見ると考えが少し変わった。

*1:Kindle版、位置No.187