まめちの本棚

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インターネット証券と「フィンテック1.0」

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こんにちは、まめちです。

週刊ダイヤモンド2017年7月15日号の記事「分岐点に立つネット証券」を読みました。 その関係で、今日はネット証券のお話をします。

ネット証券は、90年代後半の規制緩和とインターネットの普及の波に乗り誕生しました。その後は低廉な手数料を武器に、個人投資家を中心に一気にシェアを伸ばしました。今や、個人の売買委託代金に占めるネット証券7社のシェアは90%弱にまで拡大しています。

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図出典:松井証券 2017年3月期決算説明資料

http://www.matsui.co.jp/company/ir/pdf/2017_4_abs.pdf

ネット証券黎明期は、色々な新興証券会社が雨後の筍のごとく乱立しましたが、合従連衡を経て、今では主力5社(SBI証券楽天証券マネックス証券松井証券カブドットコム証券)+準主力2社(GMOクリック証券岡三オンライン証券)にほぼ集約されています。

各社トップへのインタビュー

この記事では、ネット証券主力5社とGMOクリック証券の社長、合計6人にインタビューがなされています。6人が6人とも、証券業界やフィンテックの将来について個性的な議論を展開しており大変興味深いです。

個人的に一番興味深かったのは、「インターネット証券は証券営業マンの否定であり、AIは人間の否定である」と論じる松井証券の松井社長のコメントでした。人間まで不要と切り捨てる松井社長の語り口はなかなか刺激的です。

また、GMOクリック証券の社長(鬼頭氏)にインタビューがなされていたこと、それ自体に関心を持ちました。これまでインターネット証券といえば、先述した「主力5社」でした。今回、その5社と同じ枠で当社がインタビューを受けたという事実からは、「準主力」とされてきたGMOクリック証券の存在感が増してきたことが読み取れます。

フィンテック1.0」

この記事では、90年代後半から00年代前半にかけて創業されたネット証券各社や、ネット専業銀行などを「フィンテック1.0」と位置づけるとともに、10年代中頃に創業した新興フィンテック業者を「フィンテック2.0」と呼んでいます。

この定義づけも的確だと思います。ネット証券やネット銀行はまぎれもなく、インターネットやパソコンの普及といったテクノロジーの進化なかりせば誕生しえなかった存在であり、その意味でフィンテックの申し子だからです。

株式や投資信託の取引を、自宅に居ながらにしてオンラインで行うのは今や当たり前ですが、それはネット証券が普及するまでは「当たり前」ではありませんでした。株や投信を売買するには、証券会社の店頭に出向くか、証券会社の営業マンに電話するか、自宅に来てもらって注文を取り次がねばなりませんでした。いずれにせよ、マウスを数回クリックするだけで注文を気軽に行えるという気軽なものではなかったのです。

手数料の引き下げとデイトレーダーの誕生

株式を売買する際に発生する手数料も、ネット証券が誕生するまでは証券会社を通じて比較的高額の手数料を支払う必要がありました。

カブドットコム証券と野村證券を例に出します。100万円の現物株式を取引した場合、株式(現物)の売買手数料率は、カブドットコム証券だと10bp(0.1%)程度ですが、大手証券会社(野村証券)だと93bp(0.93%)+手数料と13倍程度の差があります(※)。

野村證券の場合、条件次第では安くなりますが、それでもネット証券に比べ手数料水準は高いです。

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図出典:カブドットコム証券 2017年3月期決算説明資料

http://kabu.com/pdf/Gykpdf/accountingline/setsumei2017_03.pdf

大手証券会社は店舗や営業マンを擁しているため、その分経費が掛かってしまうのが、手数料が高くついてしまう理由です。実際の店舗を持たず、従業員も少ないネット証券会社は、そのコストがかからない分手数料を引き下げることができます。

手数料率が下がり利益を出しやすくなったこともあり、一日に何十回も売買を行い、利益を稼ぎ出す「デイトレーダー」というタイプの投資家が誕生しました。これもフィンテック1.0がもたらした社会変化の一つであると言えるでしょう*1

高い手数料率のままだと、一回当たりの取引の額や、株式の値動きが大きくなければ、一日に何度も売買を手掛けても利益を得るのは困難です。しかし、手数料率が下がったおかげで、そのような取引を、比較的少額の資金でもって、手掛けることができるようになりました。少し大げさな言い方かもしれませんが、フィンテックが金融業界の常識を変えた局面というのは、過去確かに存在したのです。

ネット証券の今後

これからのネット証券業界はどうなるのでしょうか。私は、省コスト化による手数料引き下げ競争は限界に達しており、手数料の低さに訴求する以外の戦略を取る必要があると考えてあます。

手数料収入や、信用取引にかかる金融収益が収益の柱である構造は変わらないものの、投資信託などの預かり資産からもたらされる信託報酬を安定的な収入源として収益におけるウェイトを高めるのも主要な戦略でしょう。

ほかにも、(ネット証券としての在り方を否定するようですが)相応の手数料をとりつつも、「対面でのきめ細かな顧客サービス」を実現できるネット証券会社が競争力を持つのではないでしょうか。

投資信託をはじめとした有価証券投資はまだまだ個人には敷居の高いものであり、「誰かに相談したい」というニーズは底堅いものがあります。「質が高く中立的な提案を受けるためなら相応の手数料を払ってもいい」という顧客を囲い込み、安定的な収入源とする、というのも一つの戦略かなと思います。

最後に

テクノロジーと金融はこれまでも、そしてこれからも、密接にかかわりあいつつ発展を遂げていくのでしょう。新しい技術がどのように金融システムを、そして社会を変えていくのか興味深く見守っていきたいと思います。

 ※本稿は筆者自身の個人的な見解に基づくものであり、筆者の所属する組織の見解を代表するものでは一切ありません。

※本記事は何らかの金融商品への投資や、特定の証券会社での取引を推奨するものではありません。有価証券投資は自己責任でお願いいたします。

*1:金融機関と取引するのに店舗まで出向かなくてよくなった、というのが一番メジャーな変化だと思います